ACLSとは

ACLSとは? ACLSコースのコンセプト 心停止の治療だけを行うことがACLSか?

ACLSとは?

BLSはBasic Life Supportの略で、一次救命処置と訳されるのに対して、ACLSはAdvanced Cardiovascular Life Supportの略で、日本語では二次救命処置と翻訳されます。
BLSは人工呼吸、心臓マッサージによる心肺蘇生法からはじまりましたが近年は除細動までもその範疇に入るようになりました。
ACLSは気管挿管、薬剤投与といった高度な心肺蘇生法を示しますが、心停止時のみならず重症不整脈、急性冠症候群、急性虚血性脳卒中の初期治療までを網羅したものへと進歩してきています。

ACLS コースはアメリカ心臓協会が開発した二次救命処置を医療従事者に教育する方法をさします。ACLSコースでは、ダミー、不整脈のシミュレーターを用いて、心肺蘇生の臨床現場を再現しアメリカ心臓協会が推奨する国際標準の方法で心肺蘇生法を身をもって訓練を受けます。
今やACLSは二次救命処置を意味するのみならず、そのユニークな教育方法までを包括的に意味するものとなりました。

 

On-the-Job Training

専門教育はOn-the-Job trainingとOff-the-Job trainingから構成されます。On-the-Job Trainingは仕事をするなかで学んでいくもので一緒に勤務する指導者のもとで直面する問題を解決しながら学習していく手法です。 On-the-Job trainingは実際的ではありますが、体系化されていない、効率はよくないといった特徴があります。Off-the-Job trainingは 仕事から距離をおいた状態で知識、技術を体系的に効率よく学習する手法です。AHAが推進しているBLSコース、ACLSコースはOff-the-Job trainingです。Off-the-Job trainingは、まとまった時間をとる必要がある、教材の綿密な準備が必要、専門家である指導者をある一定の時間確保しておく必要があるといった特徴があります。専門教育においてこれらは車の両輪であり両者共に必要です。例えば航空機のパイロットは実際に操縦しながら学ぶOn-the-Job trainingにくわえて1年のうちには必ずシミュレーターでのOfff-the-Job trainingがあると聞きます。振り返って従来の卒後医学教育はどうだったか?多くはOn-the-Job trainingで行われてきました。Off-the-Job trainingといっても書物による独学、カンファランス、学会参加という形態しかなかったのが実情です。ACLSコースという学習手法がわが国でもようやく認知され普及してきている背景は、臨床で役立つOff-the-Job trainingが今望まれているということではないでしょうか。

ACLSコースのコンセプト

私たち(医師、看護師、コメディカル、救急救命士)は医療を行う中で重篤な患者に遭遇します。たとえば胸痛を訴えてERにやってきて目の前で心肺停止になる患者、重症の喘息発作で待合室で呼吸停止に陥ってしまう患者、意識障害でCTの撮影中に心肺停止に陥る患者、消化管出血の内視鏡検査中によびかけに応じなくなってしまう患者など枚挙にいとまがありません。これら重篤な患者は医療従事者が治療しなければそのまま死に至る状態です。医療従事者がこのような重篤な患者に遭遇したときには大きな精神的なストレスにさらされ、パニックに陥ることもあり得ます。重篤な患者の治療をしたくてもすぐに手伝ってくれる人もいない、除細動器は隣の病棟にしかない、気管内挿管がうまくいかない、静脈ラインがとれない、薬がないなど残念ながら困難な状況はいくらでもあります。しかし私たちはいかなる厳しい状況でも医師として、看護師として、コメディカルとして、救急救命士として誇りをもってよい仕事を行いたいと切に願っています。自分のおかれた状況の困難さに打ち勝ち冷静にベストを尽くすためにはエビデンスに基づいて標準化された手順とそのたゆまない訓練が必要です。これがACLSコースのコンセプトです。

心停止の治療だけを行うことがACLSか?

心停止の治療だけを行うことが ACLSではない。

ガイドライン2000を引用します。

Guidelines 2000 for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care p I-136

Key Princliples in the Application of ACLS
The "Periarrest" Period
Emergency cardiovascular care no longer focuses only on the patient in cardiac arrest. Emeregecny care providers cannot narrow their objectives to only the arrest state.They must recognize and treat effectively those patients "on their way to a cardiac arrest" and those recovering in the immediate postresuscitation period. Once these patients are identified, ECC personnel must be able to rapidly initiate appropriate therapy. If responders treat critical conditions properly in this "periarrest" or "prearrest" period,they can prevent a full cardiopulmonary arrest from occurring.
Consequently, the international ACLS recommendations present the science-based clinical guidelines and some educational material for these periarrest conditions:

  • Acute coronary syndromes
  • Acute pulmonary edema,hypotension, and shock.
  • Symptomatic bradycardias
  • Stable and unstable tachycardias
  • Acute ischemic stroke

Impairments of rate, rhythm,or cardiac function in the postresuscitation period(by definition a periarrest/prearrest condition)

 

AHA 心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン2000 p 158

二次救命処置を適用するにあたって鍵となる原理
心肺停止前後期
ECCは もはや心肺停止患者のみに焦点をあてるものではない。救急医療プロバイダイーは心停止状態のみに対象を狭めることは不可能である。
心停止に陥りつつある患者、もしくは蘇生直後で回復途中である患者であることを認識し、治療を効果的に進めなければならない。ECC関係者は このような患者の状態が認識できたときに素早く治療をはじめることができなければならない。最初の治療者がこの心停止前後期や心停止前期の重要な時間に適切に治療を実施できれば、完全な心肺停止期状態に陥るのを防ぐことができる。
したがって 国際ACLSの勧告には、こうした心停止前後期状態に対する科学的エビデンスに基づくガイドラインと教材が提供されている。
急性冠症候群
急性肺水腫、低血圧、ショック
症状のある徐脈
安定した、または不安定な頻脈
急性虚血性脳卒中
蘇生後における脈拍、調律、心機能の障害(定義によれば、心停止/前心停止状態)

このように 二次救命処置は心肺停止患者のみに焦点をあてるものではないと国際ガイドラインは述べています。
臨床上も、心停止の治療のみではなく重症不整脈、急性冠症候群などの初期治療を適切に行うことの重要性は認識されているのではないでしょうか。
AHAのACLSコースは、この原理に基づいて企画、運営されています。
2003年12月にAHAの担当者Mr.Jerry Pottsが来日し大阪のACLSコースで講演をおこなった時にもまったく同じことお聞きしました。

 

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